緑がちる

緑はいつか散ります。でもまた実るものです。ヴェルディ&FM日記(予定)

また会いに行くね、たまちゃん

 

立川にあるストラスというお店、

そしてそこで“柴犬店長”を務める「たまのちゃん」のことは、

もう10年近く前から知っていた。


きっかけはTwitterだったと思う。

当時既にヴェルディサポの間では有名だったこのお店とその看板娘の情報が、俺のもとにまで回ってくるのに、そう時間はかからなかった。

 

ヴェルディサポーターのご夫妻が営むレストランバーというだけで、俺にとっては非常に興味をそそられるものだったが、

そこに大層かわいい柴犬ちゃんがいるとなると、これはもういてもたってもいられない(俺はワンちゃんの中でもやっぱり柴犬派である)。

 

とはいえ、その頃はまだ極貧の学生生活を送っていた身。

サークルの打ち上げで飲む養老ビールでさえ高級な部類に位置していたような俺にとって、

バーというものはどうしても敷居が高く、おいそれと行けたものではなかった。

 

そんな大学生活も終わり、就職して最初の2年間、

右も左も分からないまま社会の荒波に揉まれ、それでもヴェルディを拠り所になんとか生きていた俺にとって、やはりストラスは憧れの場所であり続けた。

お金も時間もまだまだ足りず、ストラスデビューはなかなか実現しなかったが、

それでもTwitterに日々上がるたまのちゃんの写真に元気と癒しをもらっていたし、

村岡ご夫妻がストラスを開店する前に立ち上げた”Web Restaurant Bar STOLAS”というサイトを見ながら、

自分もミドリリキュールで簡単なカクテルに挑戦したりしていた。

 

初めて生でたまのちゃんを見たのは、2017年の”VERS”企画の年だったと思う。

記憶違いだったら申し訳ないが、その年のおそらく7月のホームゲームでVERS選手達のイベントがあったため、

ペットカートに乗ったたまのちゃんもスタジアムに来ており、その周りにはちょっとした人だかりができていた。

自分もその時初めて生たまのちゃんにご対面したのだが、あまりの可愛さにしばし絶句したのを覚えている(笑)

背番号99、とてもよく似合っていたね。

 

念願叶って遂にストラスデビューを果たしたのは、その翌年の2018年1月。

同じく大の犬党の母を連れ、立川の路地裏に位置するお店に到着し、緑色に塗られたドアを開けると、

たまのちゃんが「ワン!」と元気のいい掛け声とともに、お出迎えをしてくれた。

彼女と初対面だった俺の母は「た、たまちゃん・・・」と呟いたきり、そのあまりの可愛さに絶句していた。やはり親子、リアクションが似ている。

そういや、その日以来、我が家族はたまのちゃんのことを「たまちゃん」と呼んでいる。

この写真はhttps://news.1242.com/article/164388より拝借しました。

 

初めて訪れたストラスは、俺が想像していた以上に、素敵な空間だった。

 

村岡ご主人の手掛ける、見た目も味も素晴らしいお酒の数々。

特にかねてから飲みたいと思っていたモヒートは、俺の期待を遥かに超える代物であった。

村岡奥様が腕によりをかけて作るお料理も実に素晴らしくて、とりわけこの合鴨の赤ワイン&もとだれ煮と、緑のペペロンチーノはマジで絶品だった。

 

そして、背伸びして頼んだホットバタードラムを頂く俺のことを、

慣れた様子でカウンターの一席を占領し、文字通りちょっと上の方から見下ろしていたたまちゃんは、

俺よりはるかに大人びたオーラを醸し出すお姉さんだったし、

まるで「これが本物のお酒の楽しみ方なのよ」と俺に指南しているかのような、

まさしく”会長”の名にふさわしい威厳を放っているようにも思えた。

ま、その後おやつタイムが始まるやいなや、お客さんへのお手もそこそこに、勢いよくご褒美にかぶりつくたまちゃんの姿は、正直威厳も何もあったものではなかったのだが(笑)

 

そうそう、愛されて育ったワンちゃんって、目を見ればわかる。とてもとても穏やかな目をしているから。

その中でもやはりたまちゃんは特別優しい瞳をしていて、

村岡パパ&ママが彼女に注いだ愛情の深さを如実に物語っていた。

初来店の日、たまちゃんと母と俺。
スタンプで隠れているので分からないが、
俺は多幸感に包まれバカみたいな笑顔を見せている。

 

2ヶ月後、早速妻(まだ当時は彼女だが)を連れ再度来店。

その時は確かアウェイ甲府戦の帰り道に寄ったのだが、

ヴェルディの名物サポーターむねさんもお店にいらしており、ひとしきりヴェルディ談議に花を咲かせた後、

彼にお土産をおすそ分けして頂いた挙句、帰り際にチェキまで撮って頂いたことを覚えている。とてもとても、幸せな時間だった。

2回目の来店時、帰り際に妻と。
スタンプで隠れているので分からないが、俺は多幸感に包まれ以下略

確か3回目の来店で撮った写真。
俺の中のたまちゃんベストショットである。

これは4回目の来店だったかな。
むねさんと一緒に林陵平のフラッグを掲げる俺。

こんなことを書いていると、まるで常連だったかのような口ぶりだが、

俺が住んでる場所が立川から遠いこともあり、足を運んだ回数は、合計6回。

コロナ禍があったとはいえ、1年に1回ちょっとのスローペースだ。

何をお前ごときが偉そうに、もっとこのお店の魅力を語れる人間はたくさんいるだろう、とは我ながら思う。

それでも、大切な日をどこで迎えたいか考えた時に、常に自分の頭によぎるのは、この素敵な場所だった。

 

俺の結婚が決まった2020年、緊急事態宣言が明けたあと、いとこと2人でお祝いをしたのもこの場所。

 

この前の6月、俺の誕生日を妻と一緒にお祝いしたのも、やっぱりこの場所。

 

そして、その日がたまちゃんに会った最後の日になってしまった。

 

 

 

 

今朝、たまちゃんが天国に召されたという報せを見て、もう二度と会えないんだという喪失感で、胸がいっぱいだった。

 

でも、たまちゃんに会いに行きたくなったら、また立川駅で降りて、緑色に塗られたドアを目指せばいいだけなんだ、って気づいた。

姿は見えなくったって、「ワン!」って声は聞こえなくたって、たまちゃんはいつでもそこにいて、村岡夫妻と一緒に待ってくれてる、と思ってる。

 

さっき久しぶりにミドリのリキュールを買ってきた。

明日も仕事だけど、今日はたまちゃんを偲んで、STOLASのサイトを見て覚えたカクテルを、一杯だけ飲もうと思う。


たまちゃん。俺に美味しいお酒とお食事の味を教えてくれて、本当にありがとう。

 

また会いに行くからね。

この前お伺いした時に頂いた、たまちゃんの新しい名刺。
ずっとずっと、大切に持っておきます。

 

最後に撮らせて頂いた、たまちゃんの凛々しい横顔。

そして、お父様お母様も、どうかお体ご自愛ください。

また伺います。

 

では。

 

 

味スタ徒歩遠征記、そして水戸徒歩遠征断念のご報告。

別に誰に頼まれたわけでもない無謀な計画に対しての、

勝手な撤回の言い訳をこれから述べたいと思う。

 

Twitterでも呟いてたけど、実は僕、お盆に本気で水戸まで徒歩遠征しようとしてた。

 

理由は特にない。

 

強いて挙げるのなら、僕は杉本竜士と同じ華の93年組、つまり今年が20代ラストイヤーというわけで、

何かしら無茶な企画をぶち上げ、「いやはやこれも20代だからこそなせちゃった業でさあ」とドヤ顔したかったからである。アラサーの焦り、ここに極まれり。

まあ正直何かしらブログに書けることやりてえなあ、という下心も秘めた、言うなれば“打算的若気の至り”であったことは否定できないが。

 

とはいえ、一応準備はいろいろやってた。

 

スポーツは大してできない僕だが、歩くことに関しては苦手意識はない。

水戸までの約100kmを3分割し、どういうルートを辿りどこで休みを取るのか、という行程表はあらかた作った。

それに加え、予備知識をつけるために、長距離ウォーキングの記事なんかは一通り目を通したし、

みなとみらいのスポーツオーソリティに足を運び、「ぼかぁ東京から水戸まで歩こうと思ってるんだが、ふさわしい靴をくれ」などと豪語し、アシックスのエボライド3というシューズを購入したりもした。

ありがとう、あのときでっかい「研修中」の札をぶら下げて応対してくれた兄ちゃん。

こちらまで緊張するくらいガチガチの喋りでちょっと笑ったけど、選んでくれたシューズとソール、完璧に僕の足に合ってたよ。

 

だがしかし。


今年の夏は、そんな僕の甘い考えを容赦なく捻り潰す酷暑模様であった。

水戸の予報、連日の最高気温35度。これは無理だよ・・・

僕は華の93年組、とはいえ杉本竜士のように鼻っ柱の強いガッツマンではなく、ただの軟弱ヒョロガリ野郎である。

この過酷な条件下で水戸までの道のりを踏破できるとは到底思えず、よしんばこの熱波に耐え茨城まで辿り着いたとしても、県民の3人に1人が鈴木優磨ともいわれるこの魔境、弱りきったところに野生の優磨からペットボトルを投げつけられ、倒れ込んだところをボコボコにされたのち、野垂れ死ぬ僕の訃報に「いいね!」を押されるのは目に見えている。

無念の開始前リタイアは、ほぼ決めていた。

 

ただし、例え計画は諦めかけても、僕のウォーキング熱まで完全に冷めたわけじゃない。

もともと水戸遠征の予行演習として位置づけていた、我が地元“図書館城下町(自称)”大和駅味の素スタジアムまでの徒歩遠征は、予定通り決行することにした。

 

今回の遠征は、中学からの親友P氏に付き合ってもらうことに。


彼はちょうど税理士試験を終えたばかりであり、その最初に迎える解放的な休日を、ほぼ全て僕と歩くことに費やしてくれるわけである。しかも別にヴェルディサポーターというわけではない。

僕が言うのもあれだが、同行してくれる理由が何も思い当たらない。道中苦楽をともにしてくれる仲間がいるのはありがたいこととはいえ、とんだ変人だ。

 

さて、8/6(土)10時に我が地元大和駅でP氏と落ち合い、出発。予報では最高気温29℃。

 

最初の10km少々は実に快調であった。

暑すぎない気温、薄い雲に遮られた太陽。アップダウンの少ない道のりを歩きながら、話に花を咲かせる。

P氏とは口を開けば野球かゲームの話しかしていない仲なのだが、今日もご多分に漏れずそんな話に終始し、その日開幕した甲子園や、横浜DeNAベイスターズのドラフトの話などをしていた。

あと、某ミッション系大学でラクロスをやっていた彼が語る体育会系野郎どもの理不尽バナシを聞くにつれ、スポ根とは全く縁のない学生生活を過ごしたヒョロガリ緑がちるは、「そんな思いするならまだ水戸まで歩いて野垂れ死ぬほうがいいなあ」とか思っていた。

 

さて、12時ちょうどくらいに横浜市青葉区こどもの国近辺に到着。2時間経過したここまでの歩行距離、約11km。超ハイペース。

ここでちょうど見つけたお蕎麦屋さん、Googleマップのレビューで評判が良かったので入ってみたら、これが大当たり。


エッジの効いた歯ごたえかつスルスルと喉を通るお蕎麦(しかも大盛り無料)、そして揚げ具合もタレの味も絶妙な天丼のセット、しめて1100円。

お蕎麦はともかく、運動中に天丼はどうなんだ?と訝しむ心の声を見事にかき消す、素晴らしいランチタイムとなった。

 

あと、店の中に今やDeの右のエース、地元出身大貫選手のサインが貼ってあった。

 

しっかりお腹を満たした我々は、意気揚々と歩を進める。


すでに出発後3時間以上が経過していたが、引き続き主な話題は野球であり、今年のカープ森下が不調なのはなぜか、とか、横浜DeNAベイスターズの現役ドラフトの話などをしていた。砂田が現役ドラフトに出されたりとかしたら、ちょっと悲しいなあ。

あと、緑山にある町田ゼルビアの練習場の横を通ったので、ほんの少し寄ってみた。

 

緑山を抜け、小田急線沿いを歩きながら、さすがに野球について話題切れとなった我々は、かといってヴェルディの話なぞはあまりせず、古き日の京急の魅力について語ったり、僕がしたプロポーズの話をしたりしていた。

自分で言うのもあれだが、僕は一応結婚をしているものの、恋愛の経験値そのものは、ポケモンで例えればトキワの森キャタピーくらいしかなく、実につまらない恋愛話しかできない。ただし、P氏はP氏で、友人の結婚式でうっかりディズニーペアチケットを当ててしまったものの、特に誘う人もおらず数カ月も持て余しているようなヤツなので、大変失礼ながらこちらもせいぜいニドランレベルである。

 

14時30分頃、新百合ヶ丘のジョナサンでしばし休憩。ここまでの歩行距離、約17km。

ここら辺から一気に両者ぐったりとしてくる。休憩は大事なのだが、とはいえ一度冷房の効いた部屋で、ふかふかのソファに腰を下ろしてしまうと、これまで歩くことで何とかごまかしていた疲労成分がむくむくと首をもたげ、正面から牙をむくのである。まさに緑山を抜けた我々に容赦なく襲い掛かる乳酸地獄!!!

 

15時手前、何とか気合でオアシス(ジョナサン新百合ヶ丘駅前)を抜け、再び歩き出した我々2人。

読売ランド前駅から小田急線沿いの道を離れ、いよいよこの遠征のピーク、多摩自然遊歩道のプチ登山。

なんかよさげなカフェもありました

 

この登山道を抜けた先にあるのが、日本サッカーの聖地と言っても過言ではない「ヴェルディグラウンド・クラブハウス」である。

ここまでの歩行距離、約21㎞。

 

折に触れ「サポ歴約20年」とその観戦年数の長さでマウントを取りたがるワタクシ緑がちるであるが、実はこのクラブハウスに足を運ぶのは初めてだったので、いざ実物を目の前にしてひたすらテンションが上がってしまい、

練習を終えて出てきた下部組織の子を見て「将来の金の卵や!サイン貰お!」とこっそり騒いだり、その近くを通っていたちょっといい車の運転手を見て「あれ多分藤本カンヤや!サイン貰お!」などと騒いだりしていた。

確かに運転していた人がカンヤに少し似ていたのは事実だが、この前ポルトガルで試合に出てた彼が、なぜ今ランドの近くにいるなどと思えたのだろうか。つまるところ疲労とハイテンションで正常な思考力が奪われていたのである。

 

一方、ヴェルディに特に興味のないP氏は、この辺から電池が切れかかっていた。

ことに、南武線矢野口駅付近を抜け多摩川を渡る頃には、彼の語彙力は完全に失われたようで、ひたすら「ワース」「ワース」と有名ゲーム実況者が多用する言葉をうわごとのように発しながら歩く姿を見て、僕はなぜだかウォーキングデッドが見たくなった。

 

さて、神奈川県の大和駅を出発してから約7時間弱、ついに飛田給駅に到着。

我々にとってのエルサレム味の素スタジアムはもうすぐそこである。

いつもは憎々しさしか感じない飛田給にはためくFC東京のフラッグも、今日は優しく揺らめきながら我々を歓迎しているように見える。

 

そして、17時ちょうど。ついに味の素スタジアムへ到着。

長かった・・・。

 

何はともあれ空腹を満たすべく、キボンのキッチンカーにダッシュする僕と、運動後はどうにもお腹がすかないので、スタグルはパス、というP氏。

たしかにその理屈は分からなくもないが、せっかくヴェルディの試合を観に来て、キボンもmahanaのカレーも食べずに帰るというのはなかなかの愚策である、と固く信じている僕は、しつこくP氏に意思確認をしたものの、

聞けば、ディズニーペアチケットの持ち主である彼は、どうやら気になる人にディズニーのお誘いを(本人曰くダメ元で)かけたようなのだが、あえなく断られたようで、なんか余計に食欲がなさそうであった。

まあトキワの森キャタピーくらいの恋愛経験値しかない僕であるから、特に気のきいたアドバイスなどできるはずもなく、ふむふむと相槌を打ちながら、むしゃむしゃとキボンの弁当を食べていた。相変わらずキボンの肉は非常に旨かったが、少々かけ過ぎたタバスコに僕はむせ、ちょっぴり涙した。

 

なお、今日の目的を無事果たしてしまった我々にとって、ヴェルディの試合は正直おまけみたいなものだったのだが、

いやはや強敵長崎相手に、気迫に満ちた試合を見せてくれたこともあり、我々も残された力を振り絞り、声を上げてチームを鼓舞しようとした(ただし、さすがに90分のうち半分以上は、座ってチャントを唄っていた)。

 

ちなみに、P氏が来た試合は2戦2勝ということもあり、来年はシーズンチケットを贈呈することを真剣に検討している。

 

 

さて、今回の大和駅味の素スタジアムまでの歩行距離、計約26㎞。

仮に水戸まで行くなら、この4倍以上を歩かねばならない。

改めて、我ながら無謀な計画を立てたというものだが、一方試合から2日経って自分の体調を改めて検証すると、腰に若干の痛みは残ったものの、思った以上に足へのダメージは少なかったので、「気候さえ涼しければ、まあやってやれないこともない」というあいまいかつ楽観的な結論に至っている。

 

ただし、さすがに熱中症が怖いので、

お盆の水戸徒歩遠征は、見送ることとします。

相談させてもらった皆々様、すみません。

 

まあ、来年には我らが東京ヴェルディもJ1にいることだろうし、

日程くんには、ぜひGW中に鹿島vsヴェルディあたりの試合をセッティングして頂いて、その際にまたチャレンジをしたいと考えている。

まずは野生の鈴木優磨にエンカウントしても負けることのないよう、杉本竜士よろしくエネルギー溢れる30歳を目指さなければならんね。

 

では。

とりとめのない休日に、ヴェルディがいないということ

先週起きたことに対して思ったことを、雑でもいいから形にしたくて、文章を綴ってみた。

 


先々週からコロナウイルス陽性判定者がぽつぽつと出てしまっていた、我らが東京ヴェルディ

7/10(日)の大宮戦こそ何とか乗り切ったものの、その後さらに感染者が増えてしまい、あえなくトップチームの活動はストップ。

7/13(水)天皇杯ジュビロ磐田戦、そして7/16(土)J2第27節徳島ヴォルティス戦の2試合が、急遽開催延期となってしまった。

 

さて、せっかくの3連休を迎えたものの、

東京ヴェルディの試合観戦を除けば、混沌とした世界情勢について思考を巡らせ、この世の真理を探究する知的営みに勤しむことしか知らぬ僕でありますから、

突然ぽっかり空いた時間を大いに持て余した挙句、愚民たちがうつつをぬかすゲームなるものをやろうと決意し、

フットボールマネージャーとかいうサッカーのゲームをやってみたり、スレイザスパイアをやってみたり、遊戯王マスターデュエルで恐竜デッキの型をどうすべきか試行錯誤したり、YouTubeでシャドバの大会や信長の野望新作の先行配信を眺めたりしていた。

 

つまりいつもとほぼ何ら変わらない休日を過ごしていただけなのだが、それでもそこにヴェルディの試合がないということは、やはり調子が狂う。

Twitterを眺めていたところ、そこにいるヴェルディサポーターたちは、僕と同じく突如生まれた空白の時間にそれぞれ困惑し、

ある者は代わりにヴェルディユースの応援に出向き、またある者は前倒しで連休の間に仕事を片付け、さらにある者は「代わりに試験勉強をせねば」などと宣言していた。たぶん最後のは試合の有無にかかわらず最優先にしとくべきやつだ。やれ。

 

これは別にヴェルディに限らず、多数のコンテンツに言えることだが、

思えば、この2年半で、何か愛するものを急に奪われてしまう事態に、僕らは少々慣れ過ぎてしまった気がする。

令和2年2月、イベント開催の自粛が要請されたあの時から、状況が相当前に進んだのは間違いないんだけど、

とはいえ未だにどんなエンタテイメントも突然の決行不可と隣り合わせの状況であり、もしかしたらそれは永遠の決行不可にだってなりうるわけだし、

そんな時代に生きているのだから、そこそこの諦観をもって事に当たらなければならず、僕にとってそれがひどく悔しい。

僕はとかく斜に構えて生きてきた人間ではあるが、それでも愛するものに対しては、やりすぎなくらい入れ込んできたつもりだし、これからもそうやって生きていきたいのだ。そんな愛情を注ぎたいものの多くが、簡単に足元からぐらつきかねない、こんな世の中に慣れつつあることが、とても悔しい。

 

もちろん、今回はあくまで試合の「延期」である。

罹患してしまった選手もそのうち戻ってくるし、試合はまた必ず行われる。

だから「奪われる」という形容が適切でないことは分かっているし、

なんだか大げさに書いてしまったが、実際のところ、僕が今回感じた喪失感はとてもぼんやりしたものである。

 

とはいえ、その日そのタイミングでしか足を運ぶことができず、開催を待ちわびていたサポーターも中にはいたことだろう。

もしかしたら、その日が自分の誕生日で、愛するチームに勝利というプレゼントを貰いに来るつもりだった人もいたかもしれないし、

一世一代のプロポーズをこの日味スタで決めてやろう、と意を決していた奴もいるかもしれない。いや、多分それはいないか。

そうでなくても、この日は胸スポンサーとしてクラブを支えて下さるニチガス様のスポンサードマッチだったわけで、クラブ関係者の無念さたるや計り知れないが、

そんな誰かにとって特別な日になるはずだったイベントを中止せざるを得ない、そうした状況が今なお続くことが憎い。

 

何より、この先このような計画の立てづらい不確実なエンタテイメントを、人々は敬遠するようになり、

より安定した”いつもそこにある”コンテンツ、例えばスレイザスパイアとかそういったもの、に移っていくのではないか、とも危惧している。

そして、そんな不安定なコンテンツ、例えばJリーグのチームなんて、2つや3つなくなっても、何も変わらないよな、なんて時代がもしかしたら来るのかもしれないし、そうなったときに真っ先に東京ヴェルディは潰れていきそうなものだが、これももう如何ともしがたいのかもな。また、諦観。

 

誤解しないでいただきたいのだが、俺は愛するコンテンツを生き永らえさせるために、こうしたイベントを無理やりにでもガンガン決行していこうぜ、と主張したいのではない。

今回の試合中止の判断はもちろん当然だし、チーム内で感染が広がったのも別に誰の非でもなく、それどころか関係者が不断の努力をし続けて、なおこのような事態が起きてしまっていることはよく理解しているし、だからこそ本当にやるせない。

じゃあこのやるせなさを何に向ければいいって、そりゃシンプルに言えば「感染症が憎い」で終わりだし、

日々混沌とした世界情勢について思考を巡らせ、この世の真理を探究する知的営みに勤しんでいる僕には、あるいは何か別に特定の存在を見つけ、それを糾弾したところで、何の意味もないということだけはわかっているので、

このぼんやりとした喪失感を、そのままそっと胸にしまっておこうと思う(そっとしまうことができずに、こんな文章書いてるじゃねえか、というツッコミはなしにしてほしい。その通りだから)。

そして、いつかまたヴェルディが、はたまた愛する何かが失われるような、そんな悲しい日が来ることのないように、そんな日を迎えさせることのないように、時々思い出しながら生きていきたいと思っている。

 

慣れてしまったといえばもうひとつ、こうした興行にかかわる方々の感染である。

とりわけサッカー選手のようなアスリートにとって、たとえ症状が軽かったとしても、シーズン中にトレーニングから離脱せざるをえないのは重大なアクシデントだし、

症状がある程度出てしまったら、完全にコンディションを戻すのには時間がかかるだろうから、残りシーズンへの影響も心配される。

そうでなくても、家族と同居しているような選手にとっては、家庭内感染の不安が心理的に負担となることだろう。

これはもちろんヴェルディだけに留まる話ではないが、感染してしまった方全員が、何事もなく恢復されることを心から祈っているし、

そうした逆風の中で、それでも立ち上がり戦い続ける全ての方々に、改めて敬意を表したいと思う。

 

 

だから、僕はそうした気持ちを拍手に乗せたくて、あさって磐田戦には現地参戦しようと思っている。

職場がちょっと味スタから遠いので、キックオフに間に合うかは微妙だけど、それでも何とか定時ダッシュを決めて、馳せ参じようと思っている。

 

そのためには、現在進行形で溜まっているであろうお仕事(僕のお客さんは海外なので、たとえ日本が祝日だろうと関係はない)を、今日のうちに少しでも片付けておいた方がいいのは分かっているが、

いったんそのことは頭の隅に追いやり、今もスレイザスパイアをプレイし続けている、知的営みもクソもない僕なのであった。