緑がちる

緑はいつか散ります。でもまた実るものです。ヴェルディ&FM日記(予定)

東京ダービー、前夜のひとりごと。

社内スケジュール表、4/13(土)の予定欄に「vs瓦斯、潰せ」と書いた。普段の試合日は何も書かない。この日は特別だった。

それを見た同僚が「この謎の予定、なに?」と声をかけてきた。

「ああ、それはね…」と俺はあたかも意味ありげな遠い目をして、口を開きかけて、どう表現しようか逡巡して、うまく言葉が浮かばなくて、結局「…なんでもないよ」とだけつぶやいた。「潰せ」なんて不穏なワードが含まれた予定、なんでもないわけないのだが。

しっかりとした説明をしなかったのは、同僚がそんなに興味なさそうな顔をしていたから、ってのが半分、そして、自分の中で、まだ整理がついていなかったのがもう半分。

 

なぜ俺は、彼らを「潰せ」なんて書くのだろう。

俺にとって、瓦斯・・・FC東京との試合は、どういう意味を持つのだろう。

この敵意に、どうすれば名前をつけることができるのだろう。

 

東京ダービー

2000年に「東京」の名を冠するクラブとして初めてJ1に昇格し、今では国内屈指のビッグクラブへと成長を遂げたFC東京と、
FC東京に遅れること1年、川崎からのホームタウン移転により、同じく東京のクラブとして活動を続けてきた東京ヴェルディ
ともに同じ東京スタジアム(現味の素スタジアム)をホームとするクラブ同士の一戦、これが東京ダービーです。

 

昔の自分の記事から引っ張ってきた。ま、それ以上の説明は別にいいや。

 

両者の間には、過去にたくさんの因縁が生まれた。俺らには俺らの、彼らには彼らの、それぞれの信じる歴史があり、正義がある(いや、本来そういう表現すら語弊があるのだが、長くなるのでここでは控えておく)。その対立構造は、あたかも宗教戦争の様相を呈している。

客観的な事実というのはどこかに転がっているのだろうが、それを掘り返し、誤っている人間を正そうとするエネルギーは、残念ながら俺にはない。そんな行為に意味があるなら、この世界はもう少し平和なはずだし、そもそもそれ以前に、俺にはその資格はない。

なぜなら、俺はその歴史の大部分を、当事者として知らないからだ。2008年や2011年の東京ダービーはテレビで見ていたし、それ以前の話はネット上に転がっている断片的な知識、そしてその時その場に居合わせた、古参サポの口から語られる話くらい。

 

俺にとっての本物のダービーは、昨年7月12日、天皇杯で彼らと闘った、あの日だけ。あの日に起きた出来事だけは、俺は身をもって知っている。

 

味スタへの道中に貼られただっせえ弾幕

生卵で汚された緑色の看板の写真がTwitterで流れてくるのを、腸煮えくり返る気持ちで見ながら並んだ待機列(本気でバケツとモップもって駅まで戻ろうかと思った、友人に止められた)。

普段より真ん中寄りに陣取った席から見た、アウェイ側の味スタの景色。

不穏な静寂の中、相手を挑発するチアホーンの音。そして、少し上ずった「東京ヴェルディ」コール。すぐにそれをかき消さんと鳴り響く反対側の大ブーイング。

選手入場時、緑のビッグフラッグがはためく遥か向こう側にわずかに見えた、打ち上がる赤い閃光(率直に言うが俺はそれを少しだけ美しいと感じた)。

マテウスの手を弾いた塚川のミドル。ワンダーボーイ白井の同点弾。120分の激闘。PK戦。冷静にシュートを沈め、相手ゴール裏を煽る北島、佐川。見るからに緊張した千田の後ろ姿。そして、終焉。

緑の静寂、青赤の歓喜。拍手、涙、罵声、そしてまた拍手。帰り際「スコアで負けたわけじゃない」って負け惜しみを言う頭の中の声。

飛田給駅、ホームでのすれ違い様こちらに向けて中指を立てる青赤ユニの集団。

 

あの瞬間ほど、愛するチームがJ2に甘んじていることへの悔しさを感じたことがあろうか?これ以上彼らとの差が開いちゃいけないんだよ、と血が滲むほど唇を噛んだ。いろんな感情が混ぜこぜになっていたが、J1に戻ることを強く強く渇望したひとつのピークが、あの時だった。

 

それだけのことがきっかけで、彼らは俺にとって真に潰さなきゃいけない相手になって、「瓦斯、潰せ」ってどうしても書きたくて、それは彼らへの最大限の敵意と侮蔑と、そしてほんのわずかのリスペクトを込めた感情であって、でも人から尋ねられてもろくに言語化もできなくて、でもでもそんな闘いの舞台に馳せ参じるんだって誰かに誇示したくて、それで、それで・・・

 

・・・

 

そういえば、去年のダービーのあとに、こんなことを書いた。

少なくとも今回分かったことは、こういった特別なシチュエーションの意義や熱量ってのを、真に理解できるのはその場にいた人間だけだと。だからあれこれネガティブな理由付けをして、当事者になるのを避けるなんて行為は、とにかくもったいないんだと。

ひたすら惨めになるかもしれない。とびっきり辛い思いをするかもしれない。それでも、そうした場所にサポーターとして身を置けるというのは、もしかしたらとんでもなく幸せなことなのかもしれない。改めてそう感じました。まあ、灰皿をぶつけられたりするのは、さすがに御免だけど。

 

 

9ヶ月経った今でも、この考えは変わらない

あの時より前から、頭ではずっと「東京ダービー」がなんたるか理解していた、つもりだった。でも俺の想像力には限界があって、百聞は一見に如かずだった。

もちろん「現場が一番偉い、外野は口出すな」なんて気持ちも全くないけど、歓喜だろうと絶望だろうと、この振り切れた感情が全身に押し寄せる瞬間を、一人でも多くの人間に味わってほしいというのは本音。だから、ヴェルディがJ1に戻り、再びダービーが開催されるということ、そしてホームゴール裏、バクスタが売り切れたという事実が、単純にたまらなく嬉しい。

 

ダービーの価値を上げよう」だとかいうあちらのサポの記事も読んだし、なるほど頷ける面も確かにあるのだが、ぶっちゃけそんなこと個人的にはどうでもいい。明日の味スタで、外野からも一目置かれるような特別な雰囲気が生まれるのであれば、それは間違いなく城福さんがいうように日本サッカーの発展においても有意義なのだろうが、中にいる俺にとってはそんなの結果論であればいい。

 

ヴェルディを応援してはや20年が経つが、スタジアムにたくさん通えるようになったのは社会人になってからのここ数年。当事者になればなるほど、綺麗ごとはどんどん吐けなくなっていって、その一方、たかがサポーターが”一緒に闘う”なんてバカみたい表現を好むようになっていって。

ダービーの前に何らかの文章を上げたいとは思っていて、できたらそこに少しでも意義を持たせたくて、実際途中まであれこれと頭をひねったりもしたのだけど、結局こんな感情論しか書けない。この東京ダービーという代物を、理性的に捉えることは、自分には、まだできない。

 

思うことは単純で。

俺が昨年ピッチに立った緑の戦士たちに感謝したいのは、あの日のリベンジを果たす舞台に、再び上がってくれたこと。

俺が明日ピッチに立つ緑の戦士たちに唯一望むのは、ただ、あの日のリベンジを果たすこと。

 

勝利の女神は平等主義者ではないから、昨年悔しい思いをした俺たちが、今度こそ報われるなんて保証はまったくない。

「これ以上惨めな思いはしたくない」って不安な気持ちが漏れないよう予防線で何重にも縛って、でもそんな感情をはるかに超えるであろう歓喜の瞬間を期待して、また少しその線をゆるめて。そんな感じで、明日を迎えようとしている。その過程で少し溢れすぎた感情の置き場を作っておきたくて、ここに雑多な文章を吐き出す。

 

さて。

明日味スタに向かう”当事者”の皆さん。

初めてダービーを知る人間。自分のように、昨年の悔しさを晴らしにいく人間。過去の記憶を苦々しく噛み締めつつ、それでも足を運ぶ人間。ビッグマッチに胸を高鳴らせ、勇み足で集う人間。

 

思いは人それぞれでしょうが、やることは同じ。

 

明日は最高のホームの雰囲気作ろうね

結局、全ての感情はチームの勝ち負けに帰結するわけで、そして選手たちの士気を左右するのがサポーターの声なわけで。

だから、少なくとも「応援で負けてた」なんてこと、絶対に言われたくはないよね。

我ながらなんと陳腐な締めくくりだと笑ってしまうけど、でもね。こんなの長々としたひとりごとだしね。

 

とにかく、勝ちたいよね。勝ちたいよね。

潰そうね、奴らを

 

 

お写真引用させて頂きました。ありがとうございます。

ヴェルディぼっち決起集会2024

 

・・・

 

「さあ、浮かれに浮かれた日々もいよいよ終わりだ」

「明日2月23日、遂に2024年J1シーズンが開幕、戦いの火蓋が切られる」

早すぎる!

まだ昇格記念DVDも届いてないのに!

喜びに浸るより先にカード情報が盗まれた!

「相変わらずちょっと(どころではないか)残念なのもまあ我が軍らしいといえばらしい…」

「とはいえ、あのプレーオフ決勝からもう3ヶ月近く経った」

これより先、我々は“上から3番目のチーム”から“一番下のチーム”になる

「いくら辛酸を舐めてきた我々といえど、それでも予算は基本的にリーグ中位クラスだったわけで」

「一番下と見做されるのには慣れてない」

「我らが城福監督も“サプライズを起こす”と息巻くが」

「下馬評を覆すというのは、言うは易し行うは難し」

「並大抵ではない努力と、少しどころではない運と、そして何より極めて強い団結が必要だ」

「ただ、前例がないわけではない、と思う」

「自分の脳裏によぎったのは2010年」

「消滅危機にあった選手人件費わずか約1.3億円のチームは、猛将テッケンカワカツのもと、シーズン終盤まで昇格の可能性を残した」

2010年シーズンの終わり、そして始まり=東京ヴェルディの土壇場勝負4(終) - スポーツナビ

「ピッチ外のゴタゴタが皮肉にもチームの腹を括らせた」

「経験豊富なベテラン陣と、若きユース上がり中心の選手たちが躍動するサッカーだった」

「あの時のひりつきを今度は自らの手で作り出す必要がある」

「心が折れそうになっても、愚直に自分たちのやり方を信じる必要がある」

「それが博打に勝つ最低条件だからだ」

 

そういう意味では、その姿勢を支えるサポーターも大変な年になる

「思えば、去年は第3節甲府戦のブーイングがひとつターニングポイントだった」

「賛否両論あったが、あの時、今年のチームに求めているものが何なのか定まったと思う」

「今シーズンの舵取りはさらに難しい」

「自分はゴール裏中心部の人間ではないが、その難しさはいかばかりか、と思う」

「拍手をしてもいい負けと、してはいけない負けの線引きをどうするか、我々も手探りだ」

「16年ぶりのJ1だ、どう振る舞うかに正解はない、だから怖い」

「時にフラストレーションが溜まり、時にすれ違いが生まれ、その矛先が内に向くことはありうると思っている」

「ただ、今のゴール裏が、チームのサポート以外にベクトルを向けることはないと信頼している」

100%信頼している

「些末な議論は起こるかもしれないが俺はついていく」

「共に全力で選手を後押ししようと思うし、彼らが生み出すムーブメントを微力ながら支えられたらと思っている」

「ヌルサポの俺ではあるが、自分なりに腹をくくるつもりでいる」

 

なんか偉そうに言ってるけど”腹くくる”って何するの

「…」

「…」

「ちょっとだけブログの更新を増やすように頑張るとか…」

「…」

「あと一応アウェイ遠征もたくさん行く予定立てたから…福岡とか広島とか…」

「あの…夫婦で行くと遠征費ほんとにキツくて…ユニも1st2ndどっちも買ったし…年収キュイーン(トラメガがハウリングする音)万円の人間に許される出費なのかは怪しいけど…そこも腹くくったから…」

 

「言い訳がましい俺のことは一旦棚上げさせてもらうとして」

「いろいろな仲間たちがここには集う」

「忙しい仕事の合間を縫ってスタジアムに馳せ参じる者達がいる」

「辛い日常に歯を食いしばりながらチームの背中を押さんとする者達がいる」

「重い病気と闘いながら心の火を絶やさずに愛するクラブを応援する者がいる」

「学業との両立のために関東と関西を往復してまで応援を先導する者がいる」

どうでもいいが吉田寮にいた俺の友人、留年しまくったのち今がっつりフリーターしてるからちょっとだけ気をつけてほしい、まああそこの寮生はまた特殊だと思うけど

「とにかく、スタジアムというのは、それぞれの想いが詰まり、滾り、うねる場所だ」

「そんな今のヴェルディの熱気はここ10年20年で一番だと思う」

「そうだろ?」

「その熱意を全てピッチ上のイレブンにぶつけるのだ」

全てはヴェルディの勝利のために

「歌え」

「歌うのだ」

「何年待ったというのだ俺達は」

「ここで喉を枯らさずしていつ枯らすのだ」

J1がなんだ、俺達はその初代王者だ

「恐れずに突き進め」

緑の旗のもとに

「マジの怖さも」

OKさ

 

共に熱くなり 共に戦おう

 

・・・

 

「だけどシーズンは長い」

「ひりつく試合が続くだろうが、心まですりきれてしまったら元も子もない」

フットボールというスポーツは、時として残酷で」

「しかし、とても美しい」

フットボールに伴う人生もまた美しい」

「例えいかに負けが込もうがキボンの弁当はいつも美味しい」

「今までの俺達の生き方在り方がいきなり変わるわけではない」

「ゴールが決まればタオマフを回して叫んだり」

「しょうもない失点に少しだけため息したあとまた拍手でチームを鼓舞したり」

「時には隣の席の見知らぬ誰かと喜びを分かち合ったり」

「時には一人でやけ酒を呷ってみたり」

「時には理由もなく歩いて帰ってみたり」

「ディビジョンがどこであろうと、相手が誰であろうと、それは変わらない」

どんな日常を過ごしていようと、スタジアムに来れば平等に辛く、平等に楽しく、そして非日常な空間がある

「そんな空間にいられる幸せを享受する、それだけで十分な価値がある」

「チームと苦楽を共にするというその姿は気高いが、決して無理だけはしすぎないでほしい、と思う」

 

「さあ日曜日は新国立だ」

「予報は曇り時々雨もしくは雪、最高気温は8℃」

「風邪を引かないようにバッチリ防寒着の準備をして」

「行ける人は前日の事前準備にも顔を出してもらって」

お前は事前準備行かないくせに偉そうだな

「ごめんなさい俺は行けないのですが…」

 

「とはいえいきなりの大一番、既に胸は高鳴っている」

「1993年開幕戦の再現ってシチュエーションはたしかにエモーショナルだけど」

「でもいつまでも昔の話を持ち出されるのにはもう飽きただろ?」

「受け継がれるスピリットは不変だが、俺達は絶えず変化し続けてきた」

「胸を張って今のヴェルディを肯定しよう」

”NEWヴェルディ”を知らしめる日にしよう

 

「繰り返すが、シーズンは長い」

「勝とうが負けようが次の試合はまたやってくる」

「最後に笑えていればそれでいい」

「俺達のホームに集おう」

「いろんなアウェイを旅しよう」

「存分に一喜一憂しよう」

「大いに笑い、涙しよう」

「歌おう、手を叩こう」

「いつも選手達を鼓舞する存在でいよう」

「そして試合後にはまた酒を片手に語らおうじゃないか」

 

「それが俺達のサポーターズライフだ」

 

 

 

愛するものがある人生は、幸せだ

 

 

 

 

 

あの日のような空気を、日曜日もまた作りたいですね、作りましょうね。

書きたいことだけを書いた2024東京ヴェルディ選手名鑑(後編)

前置きとして言いたいことはだいたい前編で書きましたので、未読の方はまずこちらをぜひ!

反省点は、サッカーダイジェストエルゴラッソの名鑑よりリリースが遅くなったこと。無人島に一つだけ何を持っていく?と聞かれたら迷いなくJリーグ選手名鑑を選ぶくらい名鑑大好きな筆者だが、この記事を書き終えるまでは読むのを我慢していた(書く内容に影響が出ちゃうのがなんとなく嫌だったので)。

 

それでは、MF&FW編、どうぞ!

 

MF

No.7 森田 晃樹 Koki MORITA

ヴェルディを16年ぶりのJ1に導いたキャプテン。
ピッチの中央で圧巻の技術を”魅せる”。小柄だがボール奪取力も◎

【生年月日】2000年8月8日

【ポジション】MF

【出身地】東京都豊島区

【身長/体重】167cm/63kg

【経歴】豊島SC → 東京ヴェルディジュニア-東京ヴェルディジュニアユース → 東京ヴェルディユース → 東京ヴェルディ

【2023シーズン】明治安田生命J2リーグ 40試合出場1得点

出来すぎたストーリーだった。9歳からヴェルディで育った彼は、いかにもランド出身らしい、とにかく巧くて、クールで、ちょっとスカしたオーラを身にまとってプロ入りして、1年目からその天賦の才を発揮して3G2Aと結果を残して、でも大いに期待された2年目は少し伸び悩んで、成人の抱負として「それなりに頑張ります」とのたまっては永井監督から雷を落とされ、3年目はケガもあって出遅れ、やっと出られたと思ったらSBで起用されたりして、4年目の城福政権下でボランチに固定されて、攻守ともに一段スケールアップした姿を見せて、そして腕章を託された5年目の昨季、彼は40試合に先発してタフなシーズンを戦い抜いて、でもチームはあと一歩自動昇格には届かなくて、迎えたPO準決勝では自らゴールを決めて、そしてあのPO決勝清水戦では逆に自らのハンドでPKを献上して、これが彼との歩みの終焉になってしまったとしたら、それはそれは残酷な結末だったけれど、それでも、後半アディショナルタイム、彼とともに今年のチームを支えた1学年上の谷口のボール奪取から、「晃樹、負けるなよ」と失点後に呼び捨てで彼を鼓舞した1学年下の染野がPKを獲得し、彼はヴェルディをJ1に上げた男になった。肩の荷が下りた安堵感からだろう、彼はヒーローインタビューで大号泣していて、本当に出来すぎたストーリーだった。

小説や漫画ならあるいはここで大団円となってもおかしくないほどの劇的な幕切れだったが、現実の物語はまだまだ続く。間違いなくJ1はよりタフなシーズンになる。それでも、あの2023年12月2日、絶望の淵を経験した彼は、より大きなプレッシャーを背負える男になったことだろう。今年もキャプテンとしてチームを牽引してほしいし、昔から変わらないちょっとスカした”ヴェルディらしさ”も忘れず、この戦いを楽しんでいこうぜ。これからもずっとよろしくな、晃樹

 

No.8 齋藤 功佑 Kosuke SAITO

確かな技術と戦術眼、そして決定機に絡む嗅覚を備えたMF。
昨季は4-3-3のインサイドハーフ、4-4-2の左サイドハーフを主に務めた。

【生年月日】1997年6月16日

【ポジション】MF

【出身地】神奈川県

【身長/体重】170cm/61kg

【所属歴】FC上山 → 横浜FCJrユース → 横浜FCユース → 横浜FC 

【2023シーズン】明治安田生命J2リーグ 32試合出場 4得点、天皇杯 1試合出場

ジュニアユースから横浜FC一筋、ハマのバンディエラ候補だった彼は、しかしJ1に上がったクラブと袂を分かち、昨年ヴェルディへの加入を決断した。似たタイプの森田とのポジション争いも予想されたが、確かに足元の巧さとか泥臭さを兼ね備えたタイプといった共通項もあるとはいえ、より得点に直結するプレーに長けた彼のおかげで、森田がゲームメイキングやボール奪取といった中盤の底としての仕事に専念できたところはあったのではないか。結果として、彼はキャリア最多の32試合に出場し、4G6Aをマーク。古巣を離れるにあたって何があったかは彼のみが知ることだが、とにかくヴェルディを選んだ覚悟と、必ずJ1昇格を成し遂げるという強い想いが伝わってきたし、このクラブのいいところも悪いところも俯瞰して見ることのできる彼だからこそ、そのまっすぐな熱さが周囲にも伝播したんだろうなあと思っている。上岡真里江さんによるこのインタビューは、そんな彼の視点がよくわかる良記事なので、未読の方はぜひ目を通して頂きたい。俺は彼の言葉がとても好きだ。

 

No.10 見木 友哉 Tomoya MIKI

J2通算165試合に出場し、30G14Aと結果を残した。
J2屈指の万能型MFが、新天地でJ1に挑む。

【生年月日】1998年3月28日

【ポジション】MF

【出身地】神奈川県

【身長/体重】172cm/67kg

【所属歴】FC湘南辻堂 → 湘南ベルマーレジュニア → 横浜FC鶴見Jrユース → 横河武蔵野FCユース → 関東学院大ジェフユナイテッド千葉

【2023シーズン】明治安田生命J2リーグ 41試合出場 7得点、天皇杯 1試合出場

この期に及んで「ヴェルディのNo.10にはそれ相応の重みがあってしかるべき」なんてことを言うつもりはないけど、近年背番号10が敬遠されて、なんとなく空き番号になっている、という状況は歯がゆかったので、そんな背番号を自ら志願する男が出てきたのは、とても嬉しい。ましてや、彼は昇格戦線でしのぎを削ったジェフ千葉から来た「小学生の時からずっと10番」の男だ。ちなみに、彼の獲得が決まってから、職場の後輩(ジェフのコアサポ)との会話がぎくしゃくしており、ちょっとつらい。
関東学院大学に在籍中の2019年にプロデビュー。2021年には2シャドーの一角で起用され、14G5Aと大暴れ。昨シーズン後半はボランチに定着し、LSB日高の攻撃参加をサポートしながら、自らも機を見た飛び出しで決定機に絡んだ。フィニッシャーとしての才能に加え、パスの出し手やボールの運び手としての役割もこなし、さらには球際の強さも持ち合わせる万能型。欠点はスピードくらいかな?ハードワークを身上とし稼働率も高い彼は、アグレッシブなサッカーを志向する城福ヴェルディにとって、喉から手が出るほど欲しい人材だったことは間違いなく、J1昇格決定後に真っ先に声をかけたとのこと。今季のキーマンになるだろう。

 

No.17 稲見 哲行 Tetsuyuki INAMI

2023/5/11 Tarzan「見事な腹の23人に聞いたワタシの“腹割りメシ”」にも登場。
自堕落な生活を送る全てのサポに見て欲しい「体脂肪率6.0%」の文字

【生年月日】 1999年4月5日

【ポジション】MF

【出身地】 栃木県

【身長/体重】178cm/75kg

【経歴】 喜連川SC Jr → AS栃木bom de bola → 矢板中央高校 → 明治大学

【2023シーズン】明治安田生命J2リーグ 28試合出場4得点

ギリギリのタイミングだったと思う。ルーキーイヤーの2022年に続き、昨季も開幕前に無念の負傷離脱。4月末に戦線復帰するも、5月長崎・町田との上位対決では再びベンチ外。Tarzanで”ワタシの腹割りメシ”を披露している場合じゃないのではと危ぶんでいたが、転機は彼の地元、栃木でのアウェイマッチで訪れた。先発した加藤弘堅が前半38分に負傷。代役としてピッチに入った彼は、急造の3バックゆえにどことなく重たいサッカーをしていたチームを、アグレッシブなプレーで活性化させる。さらには、後半CKの流れからプロ初ゴールもマーク。指揮官も「彼が入ったことで、チームのインテンシティがひとつ上がった」と目を細めた。

その後の試合では中盤の一角に定着し、鍛え抜かれた肉体を武器にゴリゴリと相手ボールを奪い、時には目の覚めるようなミドルシュートを決めてみせるなど、一転飛躍のシーズンとなった。あの栃木戦がなければ、あるいは城福サッカーのクオリティはJ1に到達するレベルに至らなかったかもしれない。ターニングポイントをもたらした男は、J1の舞台でもチームにダイナミズムを注入する。

 

No.18 山田 楓喜 Fuki YAMADA

小学5年生から京都サンガ下部組織でプレー。各年代別代表に選ばれてきた有望株。
パリ五輪メンバーに残れるか、勝負の年にヴェルディへの加入を決断。

【生年月日】 2001年7月10日

【ポジション】MF

【出身地】 滋賀県

【身長/体重】181cm/73kg

【経歴】土山スポーツ少年団京都サンガF.C.U-15 → 京都サンガF.C.U-18京都サンガF.C.

【2023シーズン】明治安田生命J2リーグ 17試合出場1得点、天皇杯 1試合出場、ルヴァン杯 2試合出場1得点

FW木村勇大とともにJ1京都サンガから期限付きで加入した、パリ五輪U22代表候補レフティ。ランドが生んだビッグマウスレフティ橋本陸斗は現在YS横浜に武者修行中だが、サンガ育ちの彼もヴェルディ加入にあたり「楽しみにしといてください。」とサポにメッセージを残す、強気なハートの持ち主だ。
今年のチームでレフティのアタッカーは彼一人だけ。昨年このチームは右サイドに逆足アタッカーを置き続けたし、同じやり方を継続するなら彼にかかる期待はとても大きい。とはいえ、バスケスのように大外から仕掛けたり、あるいは中原のようにするすると中に入って勝負するというよりは、181cmのサイズとキープ力を活かして溜めを作るプレーがうまい印象であり、流れを変えるというよりは流れを作る選手だと思う。なので、スターターとして見てみたい選手だし、昨年プレースキッカーを担った中原や北島が退団してしまったので、彼のキック精度にも注目しているのだが、どうだろうか。とにかく、緑の男としてパリで輝く彼の姿が見たい。

 

No.22 翁長 聖 Hijiri ONAGA

両SB/WBをこなすサイドのマルチロール。
ヴェルディではSHとしても起用されそう。セットプレーのキッカーとしても優秀。

【生年月日】 1995年2月23日

【ポジション】MF

【出身地】 兵庫県

【経歴】 加古川神野SC U-12 → 神野SC → 帝京第三高 → 中央大 → V・ファーレン長崎大宮アルディージャFC町田ゼルビア

【2023シーズン】明治安田生命J2リーグ 39試合出場3得点

別に愛校心なんてかけらもない人間だが、一度だけふらっと自分の大学の試合を観に行ったことがある。目当てはヴェルディ育ちの安在達弥と山口陽一郎、それと語学が同じクラスだったGKのやつだった。しかし、安在はベンチ外だったし、GKは自分のミスもあり、慶應に3点取られてがっくり落ち込んでいた。あと、10番をつけた古橋は、とにかく足が速かった。その試合で「取られそうで取られない面白いドリブルするな」と思った左サイドの選手がいたのだが、それが後に長崎でプロ入りする翁長だった。彼のことはなんとなく気になって、その後も時々試合の映像をチェックしていた。決して前評判の高くなかった彼は、しかし1年目からポジションを勝ち取り、長崎が歓喜のJ1昇格を決めた讃岐戦で、しっかりとゴールを挙げたりしていた。その後、大宮でも町田でもサイドのスペシャリストとしてプレーし、とりわけ町田ではロングスロー戦術の担い手としての姿を見ていただけに、ヴェルディへの加入の報せを見た時は、感慨深さより驚きが勝った。今年のレプユニのNo.も誰にするか散々迷っていたのだが、最後に直感で選んだのは「22」だった。もしかしたら、俺にもちょっとは愛校心があったのかもしれない。

 

No.23 綱島 悠斗 Yuto TSUNASHIMA

ソフトクリームを両手に喜ぶかわいらしい男である。

【生年月日】2000年8月15日

【ポジション】MF

【出身地】神奈川県

【身長/体重】188cm/80kg

【経歴】相武台FCニューグリーン → 東京ヴェルディジュニア → 東京ヴェルディジュニアユース → 東京ヴェルディユース → 国士舘大

【2023シーズン】明治安田生命J2リーグ 34試合出場2得点、天皇杯 2試合出場

彼もまた、ヴェルディの下部組織で育ち、国士舘大学を経て帰ってきた男だ。188cmと規格外のサイズを誇る彼は、ルーキーイヤーから34試合に出場。シーズン序盤は大学時代のメインポジションだったボランチで、負傷者が続出した5月頃にはヴェルディユース時代に務めたCBで、そしてシーズン終盤にはジョーカー的な起用法で、中盤~最前線までこなした。ピッチ上のどの場所にいても、その高さは相手の脅威となっていたし、長い手足を活かしたアグレッシブな守備で相手ボールを掻っ攫い、ついでにカードもよく貰っていた。今年マリノスに移籍した山村和也なんかが象徴的だが、大型ボランチというのはその便利さゆえにポジションをたらい回しにされがちなのだと思うし、一方綱島はやはり本職のボランチで勝負したいようだ。とにかく相手に寄せきる守備が求められる城福サッカーにおいて、彼が中盤で勝負するにはさらなる運動量増がカギになりそう。あと、時たますごーく軽いファウルを与える印象もある(PO決勝でサンタナが倒れたやつ、地味に怖かったぜ)ので、狡猾な相手につけこまれない経験値も身につけたら、A代表すら見えてくる逸材だと思ってる。

 

No.24 永井 颯太 Sota NAGAI

流通経済大時代にはヴェルディの練習にも参加。
小柄なドリブラーって、現チームだと意外と希少種なのよね。

【生年月日】1999年8月15日

【ポジション】MF

【出身地】栃木県

【身長/体重】169cm/59kg

【経歴】野原グランディオスFC → ホワイトリバーFC → Vamos福島SC → 中央学院高 → 流通経済大いわきFC

【2023シーズン】明治安田生命J2リーグ 37試合出場2得点、天皇杯 1試合出場

山田楓喜のことを「流れを変えるというよりは流れを作る選手」と表現したが、永井颯太は前者も前者、スーパーサブがぴったりのプレイヤーだと思う。彼にとってJ2デビューとなった昨季開幕戦で、早速そのドリブルの切れ味を披露しているので動画を置いておく(超決定機を逃している場面は見ないことにしよう)。

最終的に昨季いわきFCで37試合に出場したが、うち23試合が途中出場。そういや、今年は結局お蔵入りしてしまったのだが、Football labのデータから記事を書こうとして色々調べたところ、彼のドリブルCBPは0.62/90分と高水準(参考までに、バスケスが0.74、北島が0.59)。好ドリブラーであることは間違いない。ただし、フィニッシュに絡む精度は少々物足りなかったようだし、昨年同じ役割を期待された楠(今年J3宮崎へレンタル移籍)が、おそらく守備強度の面から出場機会を得られなかったことを考えると、彼にも同じ壁が立ちはだかることだろう。貴重なゲームチェンジャー候補は、初のJ1でどこまで輝けるか。

 

No.28 食野 壮磨 Soma MESHINO

兄は元U23日本代表の食野亮太郎(現ガンバ大阪)。
弟の彼もまたガンバユース出身。G大阪U23の一員としてJ3でゴールも決めている。

【生年月日】2001年5月20日

【ポジション】MF

【出身地】大阪府

【身長/体重】167cm/63kg

【経歴】ジョイナスFC → ガンバ大阪Jrユース → ガンバ大阪ユース京都産業大

まずはこの動画を見てほしい。残念ながら明治大学に敗れ準優勝に終わったものの、彼にとって京都産業大学で過ごした4年間の集大成となった、インカレ決勝の映像だ。

山田剛綺に続き、2年連続関西リーグMVPが入団。ただ、4年時に大きく伸びた感のある剛綺と比べ、食野は1年次にいきなり優秀新人賞、2年次にアシスト王、3年次に優秀賞受賞からの最終学年で満を持してのMVPなので、まさに関西サッカーの顔として君臨し続けた選手である。このインカレ決勝の試合映像でも伝わると思うが、小柄ながら目まぐるしくピッチを駆け回り、相手の間で巧みにパスを受け、スッと前を向いて絶妙なスルーパスを出す様は、退団してしまった梶川にも少し通じるものがある。FKやCKを蹴る映像は残念ながらあまり見つからなかったが、インタビューを見る限りキック精度には自信があるタイプのようで、今季プレースキッカーが少ないチームにおいて貴重な存在になる可能性はある。ヴェルディの昇格により食野亮太郎との兄弟対決がJ1で実現することに。既にプロでの実績充分な兄に、追いつけ追い越せの年にできるか。

 

No.32 山本 丈偉 Joi YAMAMOTO

兄はヴェルディサポには言わずと知れた山本理仁(現シントトロイデン)。
長身ながら足元も巧みなボランチ。兄とは違って右利き。

【生年月日】2006年5月18日

【ポジション】MF

【出身地】神奈川県

【身長/体重】185cm/70kg

【経歴】つくい中央FC → 東京ヴェルディジュニア → 東京ヴェルディJrユース → 東京ヴェルディユース

2006年生まれの高校3年生が、一足飛びにプロの世界に足を踏み入れる。06年といえば、エモロックの金字塔、My Chemical Romanceの「ザ・ブラック・パレード」が発売された記念すべき年でもあり、当時厨二病真っ盛りだった俺はこのアルバムのせいでどんどん根暗ミュージックにのめりこむことになるのだがそんな話はどうでもいい。

兄の理仁と同じく各年代別代表に選出されてきた逸材だが、有望株はとにかく早めにトップ昇格させていたちょっと前の時代と異なり、大卒選手を中心に層を厚くした現体制下での飛び級昇格というのは少し異色に映る。もしかしたら既に海外クラブからの引きがあって、それでプロ契約を締結したのかもなあなんて想像もしてる。とはいえ、身長は既に180㎝後半にまで成長し、U-17W杯での経験も積んできた。プロの強度に慣れれば、大型ボランチとして大ブレイクの可能性もあるだろう。兄とは違い、スタートラインはJ1の舞台だ。チャンスを掴めば一躍その名前は全国区になる。食野と同じく狙うは「兄越え」。彼の才能を全てのサッカーファンに知らしめるシーズンにしてほしい。

No.33 松橋 優安 Yuan MATSUHASHI

藤田譲瑠チマ、山本理仁(ともに現シントトロイデン)、馬場晴也(現札幌)、
石浦大雅(現愛媛)と精鋭揃いのVY01組の一人。得点感覚に優れたアタッカー。

【生年月日】2001年10月27日

【ポジション】MF

【出身地】神奈川県

【身長/体重】172cm/60kg

【経歴】鳶尾ジュニアSC → 東京ヴェルディジュニア → 東京ヴェルディJrユース → 東京ヴェルディユース東京ヴェルディSC相模原東京ヴェルディSC相模原東京ヴェルディレノファ山口FC

【2023シーズン】明治安田生命J2リーグ 17試合出場0得点

厳しいシーズンになるとは思う。ヴェルディユースから昇格したのは2020年。トップチームでは出番が限られたが、2021年シーズン途中に加入した相模原では、攻撃的サッカーを貫いたチームにフィットし、2G1Aをマーク。偉大なお手本である藤本淳吾やフィーリングの合うパサー成岡(現清水)の存在も大きかったのだろう。2022年はJ3に降格した相模原への残留を選択し、昨シーズンはJ2山口へ武者修業に出ていたが、大きなインパクトは残せなかった。
裏抜け特化でやるには相手DFを欺く狡猾さとシュート精度がもう少し欲しいし、能動的に仕掛けるアタッカーとしては突破力が物足りない。守備の強度もライバル達と比べて一段劣る印象だ。J2相模原時代のような3-4-2-1の2シャドーの一角で前を向いて勝負できれば良さが活きるのだろうが、城福サッカーのオプションには今のところなさそうだし、仮にそこでやるとしても見木という厚い壁が立ちはだかる。それでも、俺は彼の逆襲に期待したい。だって、ヴェルディをJ1に導いてくれると信じていた”01年組”の面々は、みんなチームを去ってしまった。J1復帰という一つの望みは彼ら抜きで叶ったけど、新たな夢を託せるのは、もう優安しかいねえんだよ

 

No.40 新井 悠太 Yuta ARAI

東洋大学に在学中(4年生)だが、今シーズンも特別指定選手としてプレーする。
圧巻のドリブルスキルで相手守備を翻弄。見ごたえのある選手だ。

【生年月日】2003年3月24日

【ポジション】MF

【出身地】群馬県

【身長/体重】166cm/65kg

【経歴】高崎FC中川 → 前橋FC → 前橋育英高 → 東洋大(在学中)

【2023シーズン】明治安田生命J2リーグ 8試合出場2得点

彼は彗星のごとく現れた。2023年6月2日、まだ東洋大学の3年生、全国的には無名の存在だった彼が、2025年シーズンから東京ヴェルディに加入すること、そして今シーズン特別指定選手として登録されたことが発表された。ヴェルディサポの95%くらいが「誰?」と思った。はず。それからわずか1ヶ月後の7月5日、彼は味スタであっさりプロ初ゴールを挙げ、さらにはその4日後の7月9日、新国立での町田ゼルビア戦で66分から登場した彼は、完全に相手ペースだった試合の空気を華麗なドリブル突破でガラッと変えてみせた。4万人近い大観衆の前で彼が見せたプレーの数々は、後々までの語り草になるだろう。そのドリブルスキルは”同業者”の乾貴士(清水)にも激賞され、最終的にU-22日本代表に選ばれるまでになった。そもそも彼の加入のきっかけとなったのは、その年の4月に行われた東洋大とのトレーニングマッチであり、その鮮烈なプレーを目の当たりにした強化部がすぐに練習参加を要請し、わずか2ヶ月足らずで加入内定に漕ぎつけている。このスピード感こそ現強化部の優秀さの表れだ。今年も大学に在学したままプロとの二足の草鞋を履くことになり、どこまでチーム活動に帯同できるかは不透明だが、出場さえすればさらなるサプライズをもたらす可能性は高いと思う。

 

FW

No.9 染野 唯月 Itsuki SOMENO

2022シーズンに続き、昨季もシーズン途中に鹿島から期限付きで加入。
かつて選手権を沸かせた本格派ストライカー、J1での完全覚醒となるか。

【生年月日】2001年9月12日

【ポジション】FW

【出身地】茨城県

【身長/体重】181cm/73kg

【経歴】鹿島アントラーズつくばJrユース → 尚志高 → 鹿島アントラーズ東京ヴェルディ鹿島アントラーズ東京ヴェルディ鹿島アントラーズ

【2023シーズン】明治安田生命J2リーグ 18試合出場6得点

15年分の想いが乗っかったPKだった。さぞ重かったことだろう。

2022年、シーズン途中加入ながらヴェルディのスタイルにフィットし、貴重な戦力となった彼は、しかし2023年のスタートを再び所属元の鹿島で迎えることを決意した。育ちのクラブでもある鹿島への愛着はとにかく強いだろうし、パリ五輪入りを視野にJ1での実績を挙げたかったのもあるだろう。だが、思うように出場機会を得られなかった彼は、ラブコールに応え夏に再びヴェルディへ”帰還”。再加入後初の試合となった町田戦で早速2ゴールを挙げると、その後も前線の核として起用され続けた。そしてあの日、彼は最後の最後土壇場でPKを奪取し、自らそれを冷静にゴール右に決めてみせ、そして英雄となった。

“あのPK”のシーンが象徴的だし、ホーム最終戦となった栃木戦で数的不利になってから見せた強引なドリブル突破なんかもそうだが、逆境に立たされた時の彼のプレーにはとりわけ凄味を覚える。普段どうしてもその優しい・甘い性格がゆえに隠れてしまいがちな彼のストライカーとしての本能が、極限の状況におかれたときに呼び覚まされるのだろうか。誰がどう見ても、今シーズンJ1に挑むヴェルディは逆境の連続だろう。言い換えれば、彼が点取り屋として完全覚醒を果たすにはこれ以上ない舞台が用意された、ということである。今度はヴェルディをJ1に定着させる英雄となれるのか、楽しみな1年だ。

 

No.11 山見 大登 Hiroto YAMAMI

スピードを活かしたラインブレイクと、両足から放たれる強烈なシュート。
大阪が生んだゴラッソメーカーは、心機一転東京で大暴れなるか。

【生年月日】 1999年8月16日

【ポジション】FW

【出身地】 大阪府

【経歴】 千里ひじりSC → 千里丘FC → 豊中第八中 → 大阪学院大高 → 関西学院大ガンバ大阪

【2023シーズン】明治安田生命J1リーグ 14試合出場1得点、天皇杯 1試合出場、ルヴァン杯 4試合出場

ガンバサポの会社の同期と「ヤバいのが出てきたな」と話をしたのを覚えている。生まれも育ちも大阪、本人も熱烈なガンバのサポーターだったというアタッカーは、2021年、関西学院大在学中に愛するチームへの加入が決まり、そしてJ1デビュー戦でいきなり衝撃的なゴラッソを決めてみせた。

豊かなスピード、積極的な仕掛け、パンチ力のあるシュート・・・持っているポテンシャルは間違いないが、一昨年・昨年はレギュラー定着とまではいかなかった。ガンバ自体が決していいチーム状態でなかったし、昨年なんかはポヤトスサッカーを体現できる選手の起用が優先される中で、彼のようなちょっとピーキーな選手は割を食った面はあると思うけど、本人はとにかく悔しかっただろう。昨夏にもヴェルディはオファーをしていたようだが、その時はガンバへの残留を決めている。この冬、二度目のアタックに応じ東京行きを決断してくれたが、大学の後輩の山田剛綺や木村勇大も在籍しており、チームに馴染むのに時間は要さないだろう。早速デジっちに映り込んだ汚部屋(彼の名誉のために言っておくと、そこは剛綺との相部屋だったのでどちらの責任かは分からない。ただぶっちゃけどっちも部屋汚くしそうだよな)でヴェルディサポーターに強い衝撃を与えたが、今度はピッチ上で見せる超特大のインパクに期待している。

 

No.19 河村 慶人 Keito KAWAMURA

前線での猛烈なプレッシングと強引な突破は彼の代名詞。
明るい性格でチームのムードメーカも担う。勝負の3年目。

【生年月日】1999年9月11日

【ポジション】FW

【出身地】大阪府

【身長/体重】174cm/72kg

【経歴】STAY COOL FC(現FC GRASION) → 岩田FC → 近畿大学附属高校 → 日本体育大学

【2023シーズン】明治安田生命J2リーグ 31試合出場2得点、天皇杯 1試合出場

喜びより悔しさが勝ったシーズンだったのではないか。主力としての活躍を求められた2年目の昨季、開幕戦ではRWGで起用され早速アシストをマーク。その後も彼の一番の持ち味である献身性を発揮し、トップでもサイドでも激しいプレッシングでチームを助けたが、FWとして一番求められる数字がなかなかついてこなかった。夏の補強で立て続けにアタッカーを獲得したチームにおいて序列はだんだんと下がっていき、最後の昇格プレーオフではメンバー外となってしまった。熱いハートの持ち主だけに、あのとんでもなく重要な試合でチームに貢献できなかった歯がゆさもまた大きなものだったのではないかと思う。ただし、俺たちは2022年シーズン、ルーキーながらゴール裏の「勝ちてえんだよ」って思いを一身に負って、その泥臭すぎるプレーでチームの流れを変えた彼の姿を知っている。キツイ時期だらけであろう今シーズンにおいて、その姿勢が必要になるときは必ず来る。

 

No.20 木村 勇大 Yudai KIMURA

パリ五輪世代の大型FW。京都サンガから期限付きでの加入。
関西学院大時代は、ライバルであり相棒の山田剛綺とともにゴールを量産。

【生年月日】2001年2月28日

【ポジション】FW

【出身地】大阪府

【身長/体重】185cm/84kg

【経歴】YNキッカーズ → 東京ヴェルディジュニア → ヴィッセル神戸U-12 → ヴィッセル神戸U-15 → 大阪桐蔭高 → 関西学院大京都サンガF.C.ツエーゲン金沢京都サンガF.C. 

【2023シーズン】明治安田生命J1リーグ 7試合出場0得点(京都)/明治安田生命J2リーグ 10試合出場1得点(金沢)

京都サンガF.C.から加入しました木村勇大です。

ヴェルディジュニアに所属していた自分にとっては、『初めまして』ではなく『ただいま』といった感情が強いです!

毎日のようによみうりランドに通ってボールを蹴っていたことは昨日のことのように思い出せますし、ヴェルディを離れて10年ちょっと経ちましたが、アカデミーのDNAを持ち続けています!

さいころ毎週のように通っていた味の素スタジアムで今度は自分が選手としてピッチに立ち、大声で歌っていたチャントを聴けると思うとワクワクが止まりません!

昇格を果たし、16年ぶりにいるべき場所に戻ってきたヴェルディに舞い戻り、緑のユニフォームに再び袖を通せることが本当にうれしく誇りに思います。

必ずヴェルディの力になり良い結果を残せるよう、緑のハートをたぎらせて戦います!

熱い声援をよろしくお願いします!

あまりにもヴェルディ愛に溢れすぎていて、嬉しいを通り越して「じゃあ何で新卒のときにヴェルディに来なかったんだい?」と問い詰めたくなる気持ちが芽生えるレベルのコメントとともに、京都サンガからの期限付き加入が決まったFW。185cm/84㎏のゴッツい肉体が目を引くが、ポストプレイヤーというよりは前を向いてゴリゴリ仕掛けるムービングFWタイプ。一人でカウンターを完結できる力強さは魅力的である。エース候補の染野との補完性もばっちりだと思うし、同じく京都から加入した山田楓喜の逆足クロスにファーで飛び込む木村…なんて妄想も膨らむ。なにより、大学時代の盟友山田剛綺とのタッグにワクワクしている。どっちの鼻毛が出てるとかそういう話はどうでもいいので、ピッチ上での関学コンビの絡みを早く見たい。

最初の話に戻るが、育ちのクラブというのは間違いなく愛着が残るものだし、過去にも”古巣”からのオファーに心が揺らぎつつ、自らのキャリアを考えて最終的に他チームへの加入を決断した下部組織出身選手はたくさんいたことだろう。そのうちの一人であった彼が今回来てくれたのも、ヴェルディがJ1昇格を達成したご褒美だと思うし、そんなストーリーをもっともっと成立させたいから、意地でもこのディビジョンにしがみついていかなきゃいけないと思うのだ。

 

No.27 山田 剛綺 Gouki YAMADA

デジっちネタばかりで申し訳ないが、この番組で力強く「狙うはJ1得点王」と宣言。
ライバルはチアゴサンタナとのこと。両者の威圧感の差に笑う

【生年月日】2000年9月19日

【ポジション】FW

【出身地】京都府

【身長/体重】170cm/65kg

【経歴】嵯峨SSS→ ヴェルヴェント京都FC→ 京都橘高→関西学院大学

【2023シーズン】明治安田生命J2リーグ 30試合出場3得点、天皇杯 1試合出場1得点

ルーキーイヤーとしては上々の結果を残したのではないか。大学最後のインカレで負傷してしまい出遅れたものの、シーズン中盤からメンバーに定着。アウェイ長崎戦で決めてみせたプロ初ゴールは、得点への強い執着心を感じさせるストライカーらしい一撃だった。城福サッカーをやるうえで必要不可欠な前線からの守備をしっかりとこなし、さらに小柄ながらポストプレーがかなりうまい。これでマリーシアに長けていたら、南米から連れてきた選手なのかと錯覚するほどだ。どことなくアルゼンチンとかウルグアイとかの香りがするんだよな。昇格プレーオフの2試合でも染野と2トップを組み、ゴールこそなかったものの前線でボールをうまく収めて起点となっていた。千葉のメンデス相手に普通に競り勝ててたの凄い。

今年は前線にライバルが増えたが、大学の1学年上である山見や、同級生の木村の加入はむしろ彼にとって追い風かもしれない。大柄なドリブラー木村と、小柄なポストプレーヤー剛綺。どっちの鼻毛が出てるとかそういう話は本当にどうでもいいので、ピッチ上での関学コンビの絡みを早く見たい。

 

No.29 古川 真人 Manato FURUKAWA

DFの山田裕翔とともに、国士舘大学から加入したルーキー。
大学3年次にはリーグ戦9Gをマーク。ハードワークできる選手らしい。

【生年月日】2001年11月14日

【ポジション】FW

【出身地】東京都

【身長/体重】175cm/74kg

【経歴】松原SC→ 遠藤サッカーアカデミー→ 実践学園高→国士舘大

国士舘大学からの加入が決まったのが2023年6月22日。プレースタイルはよくわからないが、写真を見る限り爽やかだけど逞しいストライカーらしい顔つきだなあと思っていたが、新加入記者会見で逞しさが増しすぎて大層いかつくなっていて、Twitterでは別人説まで出てて笑った。試合動画が見つからず自分の言葉で語れないのが申し訳ない限りだが、前情報によれば、フィジカルと走力を活かし積極的にゴール前に顔を出すプレースタイルとのこと。キャンプではサイドでも試されていたみたい。関東大学リーグ1部では、3年次に9Gを挙げ得点ランク3位タイにつけ、昨年も序盤はやや苦しんだものの最終的には7Gをマークした。明治大学から直接海外に羽ばたいていった佐藤恵允(現ヴェルダー・ブレーメンU-23)とは、高校まで同じチームでプレー。同じFWとして、彼の耳に届くような活躍を披露してほしいところ。

 

No.30 白井 亮丞 Ryosuke SHIRAI

宿敵FC東京との「東京ダービー」では、CKから貴重な同点ゴールを挙げる活躍ぶり。
ヴェルディ下部組織が生み出した最新作、そのポテンシャルに期待大。

【生年月日】2005年5月17日

【ポジション】FW

【出身地】東京都

【身長/体重】185cm/77kg

【経歴】緑山SC → FCパーシモン → FCトリアネーロ町田 → 東京ヴェルディJrユース → 東京ヴェルディユース

【2023シーズン】明治安田生命J2リーグ 1試合出場、天皇杯 2試合出場1得点

あそこであのゴールを決めていれば、彼の後のキャリアはまた違ったものになっていたかもしれない。そういった選手を何人も見てきた(俺にとって特に印象深いのは菅嶋だ、あの2015年、ニッパツでのゴールが幻でなければ…)。ストライカーというのは「持っている」「持っていない」という、理屈だけじゃ説明しきれない領域がある、と思う。そういう意味で、高校3年生ながら大一番「東京ダービー」のメンバーに入り、長友に競り勝ってプロ初ゴールを挙げた彼は、間違いなく「持っている」選手だろう。まだ線は細いが、身長はぐんぐんと伸び、現在185㎝。両足から精度の高いシュートを放ち、柔らかいボールタッチに”ヨミウリイズム”を感じさせる逸材。待望の大型ストライカーは、プロでも型破りのキャリアを描けるか。

 

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前編合わせて約25,000字!全部読んでくれた方、ありがとうございました。

またシーズン終了後に笑いながらこの記事を読み返せるような、そんな1年になるといいなあ。とにかく、待ちに待った16年ぶりのJ1、我々もヴェルディの全選手・スタッフに最大の愛をもってサポートしていきましょう!

 

・・・書き終えたのでやっと名鑑を読むことができる!!本屋さん行かなきゃ!!では!!!!!